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シーシャの害について

シーシャの健康への影響についてはみなさん気になるところでしょう。「全く安全」と言いたいところですが残念ながらタバコ葉を利用しているため完全に害がないとは言えません。ただ、紙巻きタバコとは違う特徴があるのも事実です。嗜好品ですので、正しい知識を持って楽しむことが重要と考えます。ここでは紙巻きタバコや加熱式タバコと比較しながらシーシャの有害性について説明していきます。

なお、筆者は医学、その他本項目の判断に必要な専門知識を有している訳ではありませんので、参考情報として考慮いただくようお願い致します。公式な見解は、あらゆる喫煙行為は健康上のリスクを生じるものである、であることを申し添えておきます。

シーシャと他の喫煙の違い

シーシャの他に現在よく見られる喫煙方法としては、紙巻きタバコと加熱式タバコ(iQosなど)が挙げられるでしょう。以下の表は喫煙の観点からこれらの違いをまとめたものになります。

項目シーシャ紙巻きたばこ加熱式タバコ
喫煙形態非燃焼燃焼非燃焼
タバコ葉温度〜200℃*1800℃〜*2300℃*2
フィルター乾式(多孔質)乾式(多孔質)
煙の温度低い高い高い
ニコチン含まれる含まれる含まれる
タール少ないor含まれる*1含まれる少ないor含まれる*3
一酸化炭素炭の燃焼により発生タバコ燃焼により発生発生しない
表1:シーシャと他の喫煙方法の比較

※1: Al Fakher homepageより。
    https://www.coresta.org/sites/default/files/abstracts/2019_STPOST25_Wilkinson.pdf
※2:Philip-Morris Japan 「加熱式タバコ(IQOS)の科学的安全性
※3:アイコスから「タール」が出ているのは本当か

上記のように、シーシャは加熱式タバコと同様にタバコの葉を燃やさずに吸う喫煙形態になります。さらにその温度は加熱式タバコと比べても低く、後述しますが、ニコチンの沸点(気体になる温度)よりも低い温度で喫煙します。
また、水タバコとも言われるように「水」をフィルター代わりにして吸うことも特徴的です。紙巻き、加熱式タバコはフィルターに多孔質体(マスクのようなもの)を用いています。
煙の温度に関しては、シーシャでは一般的に使われるミドルサイズのものでもステムが数10cmあり、喫煙位置が加熱部から遠く離れること、及び水による冷却が行われることから、比較的低くなっていると思われます。
ニコチン等の有害物質の発生量については成分分析方法の違いで諸説あるようです。完全に0ではありませんが、多い少ないの差はあるようです。

ここでは、タバコの喫煙形態による違いを紹介しました。以下では有害物質についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

ニコチンについて

ニコチンとは

ニコチンとは、化学物質としては毒物として指定されている。たばこの葉に含まれ、強い依存性がある。アルカロイドの一種で、神経毒性の強い猛毒です。化学物質としては毒物に指定されています。たばこの葉に含まれており、喫煙によって煙から体内に取り込まれます。血液中のニコチンは急速に全身に広がります。中枢神経にあるニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)にニコチンが結合すると、報酬系と呼ばれる神経回路に作用して心地よさをもたらします。喫煙の習慣をなかなか止めることができないのは、この仕組みが強い薬物依存を引き起こすためです。また、強い血管収縮作用があるため毛細血管を収縮させ血圧を上昇させます。中毒性があり、子供が誤ってたばこの葉を食べたりすると中毒を起こし、死に至ることもあります。ニコチンそのものには発がん性は認められていませんが、ニコチンが分解・代謝されることによって生み出されるニトロソアミン類は発がん性があることが知られています。

E-ヘルスネット, https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-034.html

特徴をまとめると以下の通りです。

  • タバコ葉に含まれる天然成分
  • 脳の報酬系を刺激することで強い依存性を持つ
  • 血管収縮作用がある
  • 毒物に指定されている
  • 沸点は247℃
  • 水溶性

ニコチンの影響

タバコを吸うとニコチンの影響でドーパミン等が放出され快感が得られます。また、シーシャを吸った際もクラッとすること(いわゆるヤニクラ)がありますが、これはニコチンの影響で血管が収縮することによる起こるものと考えられます。
ニコチンを吸うと、肺から血管へ吸収されて10〜20秒程度で脳に到達します。一方で排出も早く、1〜2時間程度で血中のニコチン濃度は半分に低下します。(JT Science, https://www.jt-science.com/ja/nicotine)
また、誤ってタバコ葉を直接食べたり、ニコチンの溶けた水を飲んだりすると中毒症状を起こすことがあり、場合によっては死亡することもありますので、シーシャのフレーバーを食べたりしないように注意しましょう(そんなことしないと思いますが。。。)

シーシャにおけるニコチン摂取について

上述した通り、タバコ葉を使うシーシャではニコチンを摂取することは避けられそうにありません。ではその量はどのぐらいなのでしょうか?

フレーバーのニコチン量

フレーバーにどのぐらいニコチンが含まれているでしょうか?
紙巻きタバコでは商品によっても異なりますが、1本あたり0.1mg〜1mg程度になります(参考:一般社団法人 日本たばこ協会 令和2年 タバコのニコチン・タール含有量)。
シーシャのフレーバーでは伝統的な中東系フレーバーであるMAZAYAのパッケージに記載がありました。0.05%だそうです。使用量を10gとすると5mgに相当します。
これを見るとシーシャのニコチン量は紙巻き比べて多いように思えます。しかし、紙巻きタバコ1本は約1gですので、同じ重さで比較するとそれほど大きくは違いません。また、紙巻きタバコのニコチン量はフィルターを通った後のものという話もあります(参考:タバコに開いている穴はなんだ?)ので、単純に比較はできないようです。

実際のニコチン量は?

残念ながら正確な量は分かりません。しかし、シーシャではニコチンの沸点(247℃)よりも低い温度(200℃以下)までしか温めないので、含まれるニコチンが全て出てくる訳でもありません。沸点よりも低ければ水が蒸発するように少しずつ出てくることになります(揮発と言います)。実際にニコチンがどれぐらい出てくるのか、ということについて世界的なシーシャフレーバーメーカーであるAl Fakher社が独自に実験を行っています(https://www.coresta.org/sites/default/files/abstracts/2019_STPOST25_Wilkinson.pdf)。この実験では、シーシャの煙の中の成分が水などタバコ以外の成分が多いことに着目して比較を行っています。その中ではニコチンの摂取量はほぼ0となっています。
筆者は、仕事柄ほぼ毎日シーシャを吸っていますが、そうでない方はおそらく週に1回でも多いぐらいの利用だと思います。つまりそれほどの依存が起こっていない、とも言うことができ、ニコチンの摂取量は少ない可能性も考えられるでしょう。

タールについて

続いてはタールについて見ていきたいと思います。

タールとは

タールとは、タバコの煙の成分のうち一酸化炭素やガス状の成分を除いた成分のことです。ヤニとも呼ばれ、黒い粘着質な物質になります。タールという物質がある訳ではなくいろいろな物質の総称として「タール」と呼んでいる訳ですね。
タールは、歯や壁につくと黄色や茶色に変色させたり、肺を黒くする成分になります。
紙巻きタバコのように葉っぱを燃やすと大量に作られます。
加熱式タバコでは葉を温めるだけで燃焼を行わないので紙巻きタバコよりも少ないと言われています。シーシャはさらに低い温度での喫煙になりますので、同様に減っていてもおかしくないと思われます。

タールの健康への影響

タールの健康被害としては発がん性があげられます。長期間の喫煙習慣により肺などへタールがへばりつき組織を壊していきます。タールの影響は長期的になりますので自分では気づきにくいものになります。ですのでタールが少ない喫煙方法を選ぶに越したことはないと思います。

シーシャにおけるタールの摂取について

紙巻きタバコではパッケージにタール量の記載があります。一般社団法人 日本たばこ協会 令和2年 タバコのニコチン・タール含有量では1mg〜10mg程度が販売量が多いようです。シーシャのフレーバーにどの程度のタールが含まれているかということは記載がありませんのでなんとも言えませんが、上記のAl Fakher社の研究によりタールの摂取量が紙巻きタバコよりも低くなることが示されています。

シーシャにおけるタール摂取に関する疑問

ここで疑問となるのは、シーシャのフレーバーには材料であるシロップや香料の成分が含まれていることです。これらは揮発性の物質なので高温で煙となった後冷やされると凝縮して固体または液体に戻ります。タール量は同じでもこれらの物質が含まれていると、その分有害物質の量は減ることになります。この辺りをどう扱うのかは疑問です。詳しい方がいらっしゃればコメント等で教えていただけるとありがたいです。
また、関連して、シーシャを作ったことがある方はご存知でしょうが、シーシャを吸い終わった後、ステムに茶色い液体がついていたり、ボトルの水が若干茶色くなります。これはフレーバーのシロップが凝縮したためと考えていますが、ひょっとしたらタールの成分が落ちているのかもしれませんね。

一酸化炭素について

続いては 一酸化炭素についてです。ニコチンやタールに比べれば有名な物質なので毒性についてもご存知の方が多いかもしれません。改めて詳しく見ていきましょう。

一酸化炭素とは

炭素を含む物質が燃焼すると二酸化炭素(CO2)が発生しますが、酸素が不足している状態で不完全燃焼を起こすと一酸化炭素が発生します。

血液中のヘモグロビンは酸素と結びついて全身に酸素を運ぶ役割をしていますが、一酸化炭素は酸素に比べて200倍以上もヘモグロビンと結びつきやすい性質を持っています。このため一酸化炭素があるとヘモグロビンは酸素と結びつくことができず、血液の酸素運搬能力が低下してしまい、酸素不足に陥ります。これが一酸化炭素中毒です。

一酸化炭素はたばこの煙にも1%から3%ほど含まれています。ニコチン・タールとともにたばこから発生する有害物質の代表的なものとして「たばこの三害」などと呼ばれます。一酸化炭素とヘモグロビンが結びついた一酸化炭素ヘモグロビンの体内での半減期は3-4時間程度なので、頻繁に喫煙する人は慢性的な酸素欠乏状態となり、ひいては赤血球が増えるなどの影響もあります。このため一酸化炭素は血管の動脈硬化を促進するともいわれています。

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-004.html

一酸化炭素の健康への影響

一酸化炭素は炭素が不完全燃焼することにより発生し、血中のヘモグロビンと結合しやすい(酸素の200倍)ことから、一酸化炭素を摂取しすぎると空気を吸っていても体内では酸素不足となり、酸欠状態となります。この状態を一酸化炭素中毒と言います。
症状としては、軽い場合で頭痛や吐き気、重篤になると失神することもあります。
初期症状としては眠気や倦怠感、軽い頭痛などが生じます。症状が出始めた時はシーシャの喫煙をやめていただく方が良いです。特に立ち上がった時に立ちくらみやめまいを起こすことがあるので、ご注意ください。

シーシャにおける一酸化炭素の摂取について

シーシャでは炭を使ってフレーバーを温める関係で一酸化炭素の摂取は避けられません。また、一回あたりの喫煙が長時間となりますので、紙巻きタバコよりも一酸化炭素摂取量は多くなる傾向があります。Al fakher社の研究によれば、一酸化炭素摂取量は紙巻きタバコよりも低くなることが示されていますが、経験上は連続して吸い続けると影響が出てくるのは避けられないと考えています。
一酸化炭素の影響は吸い方にも大きく影響されますので、急いで吸わずにゆっくりと吸って頂くことを強くお勧めします。

副流煙について

最後に副流煙についても言及しておきたいと思います。シーシャをご利用される方の中には友人についてきて自分は吸わないという方もいらっしゃるでしょう。シーシャ屋では追加料金なしでシェアを認めているところも多いです。当店でもそのような使い方も歓迎しております。
紙巻きタバコの場合、副流煙はフィルターを通さないため主流煙(吸ってる人が吸い込む煙)よりも有害物質が高濃度で含まれており、これが問題になります。
一方、シーシャの場合は煙を吸って吐き出した後の煙が周りに出て来ることになりますので、副流煙の有害物質量は、主流煙と同じかそれ以下であると考えられます。全くないという訳ではありませんが、紙巻きタバコに比べれば影響は限定的となります。

まとめ

以上、シーシャの害についてまとめました。シーシャに携わる者として少しでも皆さんに安心してご利用いただ期待と思っておりますので、シーシャの健康への影響を正しく認識の上シーシャライフを楽しんでもらえればと思います。